パーパスブランディングとは?注目されている理由と実施のポイントも

パーパスブランディングとは、自社の存在意義を基に実施するブランディング戦略です。企業の原点となる考えや根拠を表すパーパスは、「企業理念」「経営理念」と同義と捉えられることもあります。

この記事では、パーパスの概要を踏まえ、パーパスブランディングの効果や従来のブランディングとの違い、重視されている理由などを詳しく解説します。パーパスブランディングを実施する際のポイントにも触れるため、これから取り組みたいと考えている方は、ぜひお役立てください。

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1. 企業の存在意義を示す「パーパス」

パーパスとは、企業の「存在意義」を指します。企業が「何のためにあるのか」「どうしてその事業を行うのか」という、事業の原点となる考え方や根拠です。パーパスを「企業理念」や「経営理念」と呼ぶ企業もあります。

世界中のトップ企業では、パーパスを明確にして事業を展開する経営スタイルが進んでいます。例えば、日本を代表する電子機器メーカーであるソニーグループが掲げているのは、以下のパーパスです。

クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす

引用:SONY「ソニーグループポータル | Sony’s Purpose & Values」
https://www.sony.com/ja/SonyInfo/CorporateInfo/purpose_and_values/

ソニーグループのように、パーパスは自社ブランドの意義や魅力を明らかにし、会社の進むべき方向を示します。

近年ではサステナビリティへの意識の高まりから、社会課題や環境課題に取り組む企業活動に関心が寄せられていますが、ネスレでは以下のパーパスを掲げています。

食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていく。

引用:ネスレ日本「ネスレのパーパスと価値観」
https://www.nestle.co.jp/aboutus/how-we-do-business/purpose-values

ネスレは、パーパスと紐づけた食品開発や生産システム構築を目指す企業です。

1-1. ミッション・ビジョン・バリューとの違い

以下で、パーパスと似た概念であるミッション・ビジョン・バリューについて説明します。

ミッション:企業の「使命」であり、成し遂げる目標です。

ビジョン:企業が目指す「理想像」「将来の姿」です。

バリュー:企業の判断基準となる「価値観」を指します。

企業のあり方を示す概念がミッション・ビジョン・バリューです。パーパスは、社会全体の視点から見た企業の存在意義を示し、ミッション・ビジョン・バリューの概念を内包します。

2. パーパスに基づきブランド戦略を展開する「パーパスブランディング」

パーパスブランディングとは、社会全体から自社を見たときに「自社の存在意義とは何か」を明確にし、ブランディングにつなげる戦略です。パーパスは、広く社会に「自社ブランド」を知ってもらう役割を担っています。

パーパスに基づいた商品・サービス・社会貢献活動は、他社との差別化が図れ、独自のブランドを確立します。長い目で見れば、ユーザー層を絞った戦略よりも、自社ブランドそのものに興味を持ってもらえるパーパスブランディングのほうが効果が高い傾向です。

2-1. パーパスブランディングの3つの効果

以下で紹介するのは、パーパスブランディングによって生じる3つの効果です。

企業の独自性・信頼性の向上
企業はパーパスに基いて独自の商品・サービスを打ち出します。ぶれない価値観で提供される商品・サービスは、お客さまの信頼獲得のために重要な要素です。パーパスブランディングでは組織の向かう方向がはっきりしているため、企業の独自性・信頼性獲得につながります。

従業員のモチベーションアップ
パーパスブランディングは従業員のモチベーションに働きかけます。パーパスは自社の社会的な意義を明らかにする指針です。自分の業務が社会に貢献している実感は、仕事にやりがいをもたらします。従業員のモチベーションが高まるメリットは、業務効率が向上し、新しい企業価値を生み出す変革が起きやすくなることです。

意欲的な人材へのアプローチ
パーパスブランディングには、意欲的な人材を集める効果があります。求職者が職場を選ぶ際に、働く動機や「会社で何をしたいのか」という使命感は重要な要素です。パーパスがはっきり掲げられた企業には、パーパスに共感した人材、・働く意欲を持った人材が集まりやすい傾向です。

パーパスブランディングはビジネスを安定させるだけでなく、組織・人事領域においてもプラスの効果があります。

2-2. 従来のブランディングとの違い

パーパスブランディングは、従来のブランディングと目的が異なります。従来のブランディングの目的は「企業利益」であり、ユーザー層を絞って商品やサービスを提供していました。パーパスブランディングの目的は「多くの人の共感を得る」ことです。自社商品・サービスの認知拡大を目指して行動する点で、従来のブランディングと異なります。

パーパスブランディングは、長い目で見てブランドのファンを増やしたい場合に向いています。従来のブランディングは、限られた期間の利益拡大を目指していました。パーパスブランディングは、社会が求める・共感できる価値観を提供することでブランド力を高める長期戦略と言えます。

3. パーパスブランディングが重要視されている3つの理由

企業の「存在意義」であるパーパスを軸にブランディングを展開するのがパーパスブランディングです。近年では、市場環境や人々の価値観の変化に伴い、多くの企業・組織でパーパスブランディングが取り入れられています。

ここからは、パーパスブランディングが重要視されている理由について、3つの視点で解説します。

3-1. 商品のコモディティ化

これまでのマーケティングシーンは、他の商品・サービスとの「差別化」や「付加価値をつける」方針が主流でした。近年はコモディティ化が進んでおり、差別化した商品であっても類似品がすぐに現れ、自社ブランドとライバル企業との区別がつきにくい状況です。

現状を打開する新たな戦略として注目されているのが、パーパスブランディングです。パーパスブランディングでは、自社の社会的意義や社会貢献性が明示されるためお客さまからの信頼や共感を呼びます。

3-2. 消費者の関心の変化

近年、消費者の意識は「物を所有すること」から「物を通じてできる体験」に向いています。消費者は、商品の持つ価値やブランドコンセプトを重視して選択するため、価値の分かりにくい商品は埋もれてしまいがちです。

パーパスブランディングは、企業の社会的意義やブランドストーリーを魅力的に伝える方法として最適です。例えば、ユニリーバでは「サステナブルな暮らしを“あたりまえ”にする」というパーパスを掲げ、CO2排出量やプラスチック使用量の削減に取り組んでいます。ユニリーバの取り組みは、SDGsの項目とも一致しており、商品やサービスの価値を向上させています。

(引用:ユニリーバ・ジャパン「地球と社会 | Unilever」/https://www.unilever.co.jp/planet-and-society/

消費者が関心を持つのは、商品に込められたヒストリーやメッセージ性です。社会的意義のある商品・サービスを選ぶ行為そのものが、消費者にとって社会貢献につながります。

3-3. 投資家の評価基準の変化

以前の投資家が投資先を選ぶ上で重視したのは「企業の利益」でした。現在では新たな評価基準として「企業がどのように社会課題へアプローチしているのか」という点が加わっています。

投資家の評価基準が変化した背景には、環境・経済・社会が絡まった現代の複雑な社会課題があります。目先の利益のみ求める企業は生き残れないと判断され、投資家から評価されにくい傾向です。
近年注目されるのは、環境・社会・企業統治に配慮した企業を選ぶ「ESG投資」です。パーパスブランディングによって自社の取り組みをはっきりと伝えることで、投資における評価ポイントの向上が期待できます。

4. パーパスブランディングを実施する際のポイント

パーパスブランディングを実施する際は、パーパスが社会課題にアプローチする内容になっていることが重要です。環境保護や少子高齢化などさまざまな困難がある中で、自社の活動がどのような形で社会課題解決に取り組めるか考えましょう。

企業ブランディングに成功した事例として、ソニーグループが挙げられます。ソニーグループでは、パーパスに沿い、コロナの社会不安が広がる中でも社員一丸となって業務に邁進しました。パーパスを中心に据えて身近な困難に取り組む姿勢は、組織力を高めるきっかけにもなります。

(参考:SONY「ソニーグループポータル | Sony’s Purpose & Values」
https://www.sony.com/ja/SonyInfo/CorporateInfo/purpose_and_values/

パーパスブランディングを実施する際は、実際の企業活動がパーパスに即していなければなりません。パーパスを掲げるだけでは意味がなく、実現してこそのパーパスブランディングです。

まとめ

自社の存在意義に基づくパーパスブランディングを行うと、商品・サービスだけでなく社会貢献活動などの面で他社との差別化を進められます。また、ビジネスだけでなく、組織・人事領域におけるプラスの効果も期待できます。

近年、消費者や投資家の関心が変化し、企業の社会的意義や社会貢献性が重視されるようになりました。パーパスブランディングを行う際は、社会課題にアプローチできる内容を取り入れ、実際に取り組むことが大切です。

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