企業ブランディングとは?効果と実施方法を詳しく解説

企業の認知度を上げ、競合他社との差別化を行う「ブランディング」は、売上や業績の向上にもつながります。中でも企業そのもののブランド価値を高める「企業ブランディング」はすぐに効果が表れるものではないものの、実施するとさまざまなメリットがあります。

当記事では、企業ブランディングの効果と実施方法、注意点について詳しく解説します。自社の知名度を上げて、さらに会社を大きくしていきたいと考えている方はぜひご覧ください。

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1. 企業ブランディングとは?

ブランディングは、消費者や顧客に特定の商品やサービスを競合他社と差別化した状態で認識してもらうための戦略です。ブランディング戦略のうちの1つが企業ブランディング(コーポレートブランディング)です。ステークホルダー(株主や取引先、従業員など、社会全体の人々)が抱く自社のイメージや価値を高めるために行います。

企業ブランディングはマーケティングとも密接に関係し、売上向上にもつながる大切な戦略です。大企業だけでなく、中小企業やベンチャー企業にとっても大切な戦略である企業ブランディングについて、解説しましょう。

1-1. 商品ブランディングとの違い

ブランディング戦略の中には、商品ブランディングも存在します。消費者に価値を感じてもらえるよう、他社の製品と差別化することで、自社製品の魅力や性能を高めるのが商品ブランディングです。商品ブランディングには、品質や性能に関わる製造工程から、販路やパッケージデザインなど、消費者の手に届くまでの一連の流れが含まれます。

商品ブランディングは消費者に、企業ブランディングは従業員や株主も含め社会全体にと、それぞれアピールを行う対象に違いがあります。また、企業ブランディングでは、商品の性能以外の付加価値もアピールできる点が魅力です。両方のブランディングに取り組むことで、売上やイメージアップにつながる相乗効果を期待できるでしょう。

他社製品にはない価値やコンセプトのある製品を提供すれば、消費者からの信頼を得やすくなり、結果的に企業自体の信頼にもつながります。また、企業ブランディングに成功していると、「この企業の製品だから買う」という企業の信頼性が製品の購入につながることも少なくありません。

2. 企業ブランディングの効果

企業ブランド(コーポレートブランド)を確立する目的は、製品やサービスを差別化し、売上や業績を向上させることにあります。さらにブランディングで企業の魅力を社会に広く知られると、人材確保においても有利です。ここでは、企業ブランディングによって期待できる効果について解説します。

2-1. 他社との差別化

競合他社とは違った魅力を持っていると認知されることで、自社の製品やサービスが選ばれやすくなります。さらに、「〇〇といったらこの会社」と消費者や顧客に印象づけられれば、製品やサービスを長く使ってもらえる可能性が高まります。

商品やサービスの質がよくても、競合他社との差別化が十分でない場合は、価格競争に巻き込まれて売上向上につながりません。強みをアピールできず、他社と似た商品を展開していると、幅広く認知してもらうために莫大な広告宣伝費用を支払うことにもなります。

価格ではなく商品の魅力で選ばれるには、企業ブランドの方向性をしっかり打ち立て、他社との差別化を図ることが重要です。

2-2. マーケティング効果の向上

マーケティングの目的は、顧客が自然と自社の商品やサービスを利用したくなる状態をつくることです。広告宣伝や販売促進のためのプロモーション活動、取引先への営業や販売経路の開拓などは、マーケティング戦略の一部です。

企業ブランディングを行って自社の強みをPRできれば、マーケティング戦略を有利に進められます。製品開発への取り組みや企業としての理念が社会に認知されると、さらに売上の向上に期待できるようになります。

組織の中で自社の取り組みや方針を共有することも、企業ブランディングには重要です。従業員が自社の取り組みをしっかり把握していれば、取引先へのマーケティング効果の向上も期待できます。

2-3. 資金調達の効率化

大規模な設備投資をする場合、売上からの利益だけでは資金をまかなえないこともあります。事業を拡大するには、資金調達が欠かせません。資金調達をするにあたって、以下の方法があります。

  • 投資家や銀行から融資、借入を受ける
  • 株式を発行して公募増資を行う

資金調達を行う場合は、調達した資金の用途や経営方針を明確にすることが大切です。企業ブランディングで成長のビジョンを発信している企業は、資金調達の運用や目的に説得力のある説明ができるため、融資や増資を受けやすくなります。単純な利益だけでなく、理念に共感してもらえる企業を目指せば、株主から株を簡単に手放されにくくなる効果も期待できます。

2-4. 顧客ロイヤリティの向上

顧客ロイヤリティとは、顧客が自社の商品やサービスに対して抱く信頼や愛着のことです。顧客ロイヤリティが高い顧客は、競合他社から似た商品やサービスが展開された場合でも、自社のものを利用し続けてくれる確率が高まります。自社に愛着を感じている顧客は、予算や販路の問題で商品を利用していない場合でも、問題が解消されれば利用を検討してもらえるケースもあります。

顧客ロイヤリティを高めるには、商品やサービスの性能だけでなく企業としての印象の良さも重要です。企業ブランディングによって顧客のポジティブな感情を引き出す戦略は、顧客ロイヤリティの向上に効果を発揮すると言えます。

2-5. 優秀な人材の採用

近年は、人手不足が原因で倒産する企業が出るほど人材の確保が難しい状況です。また、せっかく優秀な人材を採用しても、入社後のギャップが大きいと、早々に退職や転職をされてしまうこともあります。離職者が多いと、採用や育成にかかったコストが回収できません。価値観の合う優秀な人材の確保を目標に、採用ブランディング戦略をしっかりと立てる企業も増えています。

優秀な人材を確保し、長く働いてもらうためにも企業ブランディングが効果的です。企業文化づくりをしっかりと行い、価値観や社風が社内外に浸透するよう心がけましょう。認知度の高い企業は、企業理念をよく理解し共感を抱いている求職者が集まりやすくなります。また、企業の認知度が高まれば、採用のための広告コストを削減できます。

3. 企業ブランディングの実施方法

企業ブランディングを行うときは、PDCAサイクルに則った実施方法で行うと効果的です。企業ブランディングにおけるPDCAサイクルは、以下の通りです。

  • P(Plan・計画) 現状把握を行い、ブランドを定義する
  • D(Do・実行) ブランディングの計画を立て、実行する
  • C(Check・検証) 実践し、効果を検証する
  • A(Action・改善) リブランディングをする

ここではブランディングを進める際に必要な手順について、詳しく解説します。

3-1. 現状把握を行う

昨今、スマートフォンやSNSの普及により、顧客のニーズの多様化が急速に進んでいます。多様なニーズに対応すべく、市場環境も日々変化しているため、ブランディングの際には現状を分析することが必要不可欠です。

現状分析では、外部環境と内部環境の2つの分析を組み合わせて考えます。外部環境は市場の動きや大きさ、顧客のニーズ、競合他社の動向など、業績や売上を左右する社外の要因のことです。自社の商品やサービスがトレンドやニーズに対応しているか、競合他社が市場にどれほど存在するかを見極めます。

対して内部環境とは、自社の人材や資産などのリソースにまつわる要因のことです。予算やプロジェクトメンバーとして適切な人員を把握し、どのような戦略をどのような規模で行えるかを検討します。

「3C分析」や「SWOT分析」は、いずれも外部環境、内部環境を合わせた現状分析の方法です。1つの分析方法にこだわらず複合的に用いることで、視点の漏れを防げます。

3-2. ブランドを定義する

ブランドの定義とは、世間に認知してもらいたい企業イメージです。どのような存在意義を持つか、どのような価値を社会に提供するかといった企業としての在り方を示し、ブランドアイデンティティと呼ぶケースもあります。

競合他社が同じような商品やサービスを提供している場合、商品価値だけで顧客に選ばれ続けることは容易ではありません。現状分析から導きだした自社の強みや、差別化のアイデアを活用し、オリジナリティや独自の価値があるブランド方針を打ち立てましょう。

ブランドを定義するにあたって大切なことは、顧客のイメージと企業が抱いてもらいたいイメージを合致させることです。「堅実」「親しみやすい」「サステナビリティー」など、顧客のイメージはさまざまです。企業と顧客との間でイメージのギャップがあると、顧客満足度にも悪影響を及ぼします。

3-3. 計画を立てる

定義した企業のイメージを、顧客や社会に向けてどのように発信するか計画を立てます。社外に向けて発信するには、まずは社内の従業員が自社の企業イメージに精通している必要があります。ブランドを定義した後は、まず社内でイメージを共有することを忘れないようにしましょう。計画を立てるには以下のような手順が発生します。

企業のイメージにふさわしい企業ロゴや名称を考案する

企業イメージを社内の従業員に共有する

ブランドの認知を広める広告手段を決める

ブランドの定義を参考に、どのようなユーザー層にアピールするか、市場でどのような立ち位置を目指すかといった方針を考えるといいでしょう。環境にやさしい企業であることをアピールする場合は、製品のパッケージに再生紙を用いるといったように、企業から発信するすべての情報に一貫性が感じられる状態が理想です。

3-4. 実践・検証する

作成した計画に基づき、ブランディング戦略を実行に移します。その際、定期的に効果を検証することが重要です。ブランディングの効果を検証する際は、以下の2点に着目するといいでしょう。

ブランドがどれだけ認知されているか
ブランドの認知度は、ただ社名を知っているだけの「単純認知度」だけでなく、事業の中身や特色まで知っている「内容認知度」を上げることが大切です。デジタル化が進む近年では、自社のWEBサイトを訪れたユーザーの動向をリサーチし、分析する認知度調査方法が行われます。ブランドの認知度は、マーケティングが効果的に行われているかを確認する目安にもなります。

顧客がどの程度ブランドを人に推奨したいと考えているか
顧客が自社ブランドをどの程度推奨したいと考えているかで商品やサービスへの満足度が分かります。一般的には、「商品をどの程度友人に勧めたいか?」という質問項目に0~10段階で回答してもらうNPC(Net Promoter Score)を用いて数値化し、客観的に分析します。

3-5. リブランディングする

リブランディングとは、既存の企業イメージをトレンドやニーズに合わせて再構築することです。競合他社が増えて自社の独自性のPR力が弱まったときや、強みが当たり前になってしまい陳腐化したときに行うと効果的です。

リブランディングでは、ブランディングを現状分析からやり直します。市場や競合の会社に変化はあったか、新たな問題が起こっていないかなどを検証し、既存のブランドの効果が弱まった原因を探ります。

現状分析の後に行うのは、新たな戦略の策定です。ユーザー層の変更や、企業イメージに合わせた新たな強みの獲得と差別化、既存のブランドが抱えている課題の解決が、新たに取り組むべき戦略となるでしょう。リブランディングに受け入れづらさを感じた顧客が離れる原因にもなるため、ブランド名のほか理念やミッションといった企業の根幹はできるだけ変えないほうがよいでしょう。リブランディング後は、変更が従業員や世間に浸透するよう広告や宣伝を行います。

内部リンク:リブランディング(re branding)とは|実施するときの流れ

4. 企業ブランディングは時間をかけて行う

企業ブランディングは、効果が現れるまで時間がかかります。プロジェクトを立ち上げた後は、中長期的な視野で取り組むものだという認識を持つようにしましょう。

効果が現れるまでの時間は、企業の規模が大きくなるほど長くなります。中小企業やベンチャー企業は、企業ブランディングに費やせる資金や人材が少ない反面、ブランディングの効果が比較的短期間で見えてくることもあります。規模の小さい企業であれば数か月でブランディング効果が出る成功例もありますが、大企業では、十数年かけて自社ブランドを育てる事例も少なくありません。

また、費用についても企業の規模次第で大きな差が生まれます。中小企業やベンチャー企業であれば、ブランディングには一千万円以上かかると見積もっておきましょう。大企業であれば、その分大がかりな戦略が必要になるため、時には費用が一億円を超えることもあります。また、ブランドコンサルティング会社に依頼した場合は、さらに費用がかかるケースが一般的です。

しかし、時間とコストをかけて育てたブランドは唯一無二の強みとなり、企業のブランド価値を向上させます。焦らずに長期的な視点を持って取り組みましょう。

まとめ

企業ブランディングは、競合他社との差別化を図りながら、自社のイメージを高めるために行う戦略のことです。自社にどのようなイメージを持ってもらいたいのか、ブランドの定義を定めた上で発信計画を立てブランディングを行います。

企業ブランディングには費用と時間がかかり、長期的な視点で行う必要があります。ブランドが浸透するまでは大変ですが、人材採用や資金調達の効率化、顧客ロイヤリティの向上にもつながるため、企業ブランディングにも積極的に取り組みましょう。

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