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PEST分析のやり方|目的・注意点も
2023年12月28日
PEST分析は、企業の外部環境を分析するためのフレームワークです。政治(Political)、経済(Economic)、社会(Social)、技術(Technological)の4つのマクロ要素に焦点を当てています。一方で、企業の成功には外部環境だけでなく、内部環境も大きく関与しているため、外部環境・内部環境ともに分析することが大切です。
当記事では、PEST分析の基本から効果的なPEST分析のやり方・手順まで、詳しく解説します。PEST分析以外の環境分析フレームワークも紹介していますので、戦略立案に役立ててください。
1. 外部環境の変化・影響を分析する「PEST分析」とは?
PEST分析とは、企業の外部環境を調査・分析するためのフレームワークです。
「PEST」とは、この分析で重要視される4つの要因、政治(Politics)・経済(Economy)・社会(Society)・技術(Technology)の頭文字を取ったものです。PEST分析は、企業が事業を展開する際のマクロ環境の要因を明確にし、それらが事業や市場に与える潜在的な影響を把握することを目的としています。
3C分析で自社を取り巻く市場環境を調査すれば、より訴求力の高いマーケティング施策に活用できるほか、事業計画の方向性を決定する際にも役立ちます。
1-1. マクロ環境分析とミクロ環境分析の具体例
マクロ環境とは、企業に対して間接的に影響を与えるような、外部環境のことです。マクロ環境分析の例としては、PEST分析や、PEST分析を拡張したモデルであるPESTEL分析(環境(Environmental)・法律(Legal)が追加されたもの)、SWOT分析などが挙げられます。
ミクロ環境とは、企業の活動に直接的な影響を及ぼす外部環境のことです。例えば、顧客動向、競合他社動向、サプライチェーンの動向、市場規模などが挙げられます。ミクロ環境を分析するための手法としては、5フォース分析や3C分析などが代表的です。
2. 外部環境の変化を味方にすることがPEST分析の目的
PEST分析は、政治(Politics)・経済(Economy)・社会(Society)・技術(Technology)の4つの要因を中心に、外部環境の動向や変化を把握することが目的です。PEST分析によって企業は、将来のビジネス環境の変化やトレンドを予測し、これからの戦略を明確にするための参考情報を得られます。
外部環境の変化は、企業にとってのリスクとして捉える人も多いでしょう。しかし、外部環境の変化を事前に察知し、適切に対応することで、これらのリスクをチャンスに変えることも十分可能です。
例えば、技術の進化を早期に捉え、新しい製品やサービスの開発に取り組むことで、市場の新しいニーズを先取りし、競争優位を築けます。ほかにも、環境問題に対する社会的な関心の高まりを背景に、サステナビリティを重視した商品やサービスを提供することもその一例です。顧客の信頼を獲得し、ブランド価値を向上させられるでしょう。
つまり、PEST分析を行う最終的な目的は、外部環境の変化を単なるリスクとして捉えるのではなく、ビジネスの機会として生かすための洞察を得ることにあります。
3. PEST分析に使われる外部環境の4要素
続いて、PEST分析の要素である、政治(Politics)・経済(Economy)・社会(Society)・技術(Technology)の各項目について、どのような項目を確認すればいいのか、具体的に解説します。
各要因は、短期的なものから長期的なものまでさまざまあります。企業の持続的な成長のためには、4つの要因を適切に理解し、事業戦略に反映させることが不可欠です。
3-1. Politics(政治)
「Politics(政治)」は、ビジネス活動に影響を及ぼす可能性がある政府の方針や政策、政治的安定性、外交関係、法制度などの要素を指します。
【Politics(政治)の具体例】
- 規制政策
- 法改正
- 税制変更
- 政権交代
- 国際関係
政治的な要因は、企業の運営や事業展開の方向性に直接的あるいは間接的に影響を与える場合があります。例えば最近では、インボイス制度に関する対応や、労働基準法の改正などが、Politics(政治)の1つの例として挙げられるでしょう。
3-2. Economy(経済)
「Economy(経済)」は、マクロ経済の動向や状態がビジネス環境にどのような影響を及ぼすかを考察する要素です。
【Economy(経済)の具体例】
- 経済成長率
- 消費者物価指数
- 景気
- 株価
- 金利
- 為替
- 失業率
- 原油価格
例えば、消費者物価指数(インフレ率)が変化すれば、生活費や購買力も変化します。高インフレの状態では企業のコスト管理が難しくなるケースもあるでしょう。
3-3. Society(社会)
「Society(社会)」は、社会の価値観、文化、消費者の嗜好、人口動態、教育や健康意識など、人の生活や考え方に関連する要素です。
【Society(社会)の具体例】
- 人口動態
- 流行
- ライフスタイルの変化
- 文化
- 宗教
- 教育や健康意識の高まり
社会的要因は、市場の需要や製品・サービスの受け入れられやすさ、企業のブランドイメージ、社会的評価に影響を及ぼす要素となります。例えば、新型コロナウイルス感染症の流行により、リモートワークが普及しました。自宅での過ごし方や商品の需要動向、通信インフラの必要性なども大きく変わったでしょう。
3-4. Technology(技術)
「Technology(技術)」は、技術の進化やイノベーション、それに関連する研究開発の動向、新しい技術の普及率や影響範囲などの要素です。
【Technology(技術)の具体例】
- 人工知能 (AI)
- 5G
- ビッグデータ
- IoT
- ブロックチェーン
- メタバース
- AR
- 自動運転システム
- 再生可能エネルギー
- バイオテクノロジー
技術の進化は産業や市場に変化や革命をもたらし、企業が取るべき戦略や方針に大きな影響を与えます。例えばAIの進化・発展により、顧客対応、データ解析、自動運転、医療診断、スクリプトの作成など、多岐にわたる分野での活用が進められています。
4. 効果的なPEST分析のやり方・手順
外部環境(特にマクロ環境)を把握する上で、PEST分析を行う際は、以下の6ステップを踏みましょう。外部環境を正しく分析できると、より効果的な事業計画の策定にもつながります。
4-1. 対象の設定・情報の収集
まずは、分析の対象となる地域や国、産業、市場などを明確に定義します。例えば、特定の国で新しい製品をローンチする予定の企業がPEST分析を行う場合、その国の具体的な状況や特性を対象として設定することで、後の分析がより効果的になるでしょう。
次に、設定した対象に関連する情報を幅広く収集する作業を行います。公的な統計データ、業界レポート、専門家の意見、ニュース記事など、定性・定量の両面から、さまざまな情報源からのデータを集めることで、包括的な視点を持てます。
4-2. 情報の分類
収集した情報を効果的に整理し、分析に適した形に落とし込みましょう。具体的には、収集した情報をPESTの4つのカテゴリーごとに分けます。例えば、政策の変更や法規制に関する情報は「政治」、経済成長率や失業率に関する情報は「経済」といった具体的なカテゴリーに情報を振り分けます。
ただし、分析リソースには限りがあり、すべての情報が同等の価値を持つわけでもありません。自社に関する市場や産業、製品において最も重要な情報を、取捨選択していくことが大切です。
4-3. 事実と解釈の区別
分析の正確性と客観性を担保するために、収集・分類された情報の中から、何が事実であり、何が事実に基づいた解釈や意見であるかを明確にします。
事実とは、確認や検証が可能な、具体的なデータや出来事のことです。例えば、国の経済成長率や特定の技術の採用率、新しい法律の制定など、具体的な数値や事実を示す情報が事実に該当します。
一方、解釈とは、事実に基づいて行われる分析や推測、意見のことです。例えば、ある技術の採用率が増加しているという事実に対して、「その技術が今後の市場で主流となる可能性が高い」という解釈がなされることが考えられます。
事実と解釈、どちらの情報も非常に価値があるものの、性質や使用方法が異なるという認識を持つことが大切です。正確なPEST分析を行うためには、事実と解釈を混同せず、それぞれの情報が持つ特性や価値を理解し、適切に取り扱うことが求められます。
4-4. 機会と脅威の区分
整理された事実や解釈をもとに、それらが企業やプロジェクトにとってどのような影響を与える可能性があるのかを評価します。具体的には、ポジティブな影響やチャンスを「機会」として、ネガティブな影響やリスクを「脅威」として識別しましょう。
機会の識別では、外部環境の変化が企業にもたらす可能性のある利益や利点を特定します。例えば、新しい技術の普及によって、新しい市場の開拓や生産性の向上といった機会を生む可能性が考えられるでしょう。
一方で、脅威の識別では、外部環境の変化がビジネスに対して持ち込む可能性のある障害や問題点を特定します。例としては、新しい規制や競合の台頭などが挙げられるでしょう。
機会と脅威を適切に区別することで、企業は今後の戦略や方針をより明確に策定できるようになります。
4-5. 短期と長期の区分
「短期と長期の区分」は、機会や脅威が組織やプロジェクトに対してどの程度の時間軸で影響を及ぼすかを理解するための重要な作業です。
短期的な影響とは、通常、1年以内に現れる影響や変化を指すことが多いです。一方、長期的な影響はそれよりも長い時間軸、例えば3年・5年・10年といった期間を指すことが一般的です。例えば、技術の進展は短期間で大きな変動をもたらすことがあります。一方で、社会的な価値観の変化や人口動態の変動は、長期的な視点で捉える必要があるでしょう。
短期的な変動には迅速な対応が求められることが多く、リソースや注力する分野をしっかりと選定する必要があります。長期的な影響に対しては、戦略の見直しや持続的な取り組みを計画することが重要となるでしょう。
5. PEST分析を行う場合の注意点3つ
PEST分析は定期的に実施し、その都度戦略への反映を検討することも大切です。外部環境は常に変動しており、過去の分析結果が現在や未来にそのまま適用できるとは限りません。
ここでは、PEST分析を行う場合の注意点を3つ紹介します。
5-1. 目的を明確にして分析する
PEST分析を行う際には、なぜPEST分析をするのか、その目的を明確にすることが大切です。
例えば、新しい市場への進出を考えている企業と、既存の市場での競争力を強化しようとしている企業とでは、PEST分析の中で注目するべきポイントや結果の捉え方が異なります。
また、目的を明確にすることで、不必要な情報の収集や分析を避け、リソースを効果的に使用できるでしょう。無目的な分析は、情報過多となり、結果的には分析の質の低下や重要な情報を見逃してしまうリスクも発生します。
5-2. 内部環境分析と組み合わせて活用する
事業の成功には、外部環境だけでなく内部環境も大きく関与しています。外部環境の変化やトレンドを分析するだけでなく、外部環境が企業の内部環境、例えば組織の資源や能力、文化、価値観とどのように関連し、どのような影響を与えるのかまで考えましょう。
例えば、技術発展が業界に新しい機会をもたらしている場合、その技術を取り入れる前に、企業の内部資源やスキル、組織文化などが十分に整っているかどうかを評価する必要があります。また外部環境として、景気の変動や政治的なリスクが生じた場合は、企業の財務の健全性やリスク管理の体制といった内部要因が、外部の脅威にどれだけ耐えられるかを判断する材料にもなるでしょう。
つまり、PEST分析を効果的に活用するためには、外部環境の評価と同時に内部環境の強みや弱み、機会や脅威を網羅的に分析し、両者の関連性や相互作用を深く理解することが大切です。
5-3. 短期計画の策定には使用しない
PEST分析は、4つのマクロ的要素を対象とした分析手法です。これらは中長期で変化していくものがほとんどなので、基本的には長期的な戦略策定やビジョンの構築に適しています。
PEST分析を短期計画の策定にそのまま適用すると、戦略や計画が抽象的で現実的でないものになるリスクがあるので注意しましょう。
6. PEST分析以外に環境分析が行えるフレームワーク3選
最後に、PEST分析以外の代表的な環境分析手法(フレームワーク)を3つ紹介します。どの分析も、さまざまなビジネスシーンやプロジェクトで利用されます。経営者や組織のリーダー、マネージャーにとって重要な考え方・フレームワークと言えるでしょう。
PEST分析と合わせて活用し、自社や事業の成長に生かしてみてください。
6-1. 内部と外部を並列的に分析する「SWOT分析」
SWOT分析は、内部環境と外部環境を並列的に評価するためのフレームワークです。
SWOTは、組織の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の頭文字をとったものです。このSWOTの要素を分析し、戦略の策定や意思決定に活用します。
6-2. マーケティング環境を分析する「3C分析」
3C分析は、ビジネスの戦略的な方向性やマーケティング戦略を形成するためのフレームワークです。主に自社の「Company」、競合他社の「Competitors」、顧客の「Customers」の3つの要素を中心に分析します。
3C分析を行うことで、市場における機会を捉えやすくなり、競合他社との差別化や顧客満足度の向上につながる戦略を考えやすくなります。
6-3. 事業環境を分析する「5フォース分析」
5フォース分析は、産業の競争構造を評価するためのフレームワークです。5フォース分析では、以下の5つの競争要因(脅威/フォース)を考慮します。
- 産業内の競争の激しさ
- 新規参入の脅威
- 代替品の脅威
- 購買者の交渉力
- 供給者の交渉力
5フォース分析を実施することで、企業は5つの競争要因が自社の戦略や業績にどのような影響を及ぼすかを理解できるでしょう。その上で、競争力を維持・強化するための戦略を策定することも可能です。
まとめ
PEST分析のメリットとして、企業の外部環境を体系的に捉えることができる点が挙げられます。政治、経済、社会、技術という4つのカテゴリーを基に、外部の要因や変化を網羅的に検討することで、将来のビジネスの機会やリスクを予測しやすくなるでしょう。
一方で、PEST分析の結果は抽象的かつ一般的な内容になりやすいです。PEST分析を行う目的を明確にし、最終的には具体的な戦略やアクションプランに結びつけましょう。