行動指針とは?企業が定めるメリットやつくり方を解説

行動指針とは、企業や組織が目的を達成するために全体に共有する行動のルールやガイドラインを指す言葉です。ビジョンやミッション、戦略や文化など重要な項目を反映した内容が多く、企業が達成したい目的や方向性、企業の価値観を表現した企業理念の一部としてとらえられます。

この記事では、行動指針の概要に加え、策定するメリットや決める際の流れ・浸透させる方法を解説します。実例も挙げるので、これから自社の行動指針の策定や見直しを検討している方は、ぜひお役立てください。

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1. 従業員が業務を行う際の行動基準となる「行動指針」 

行動指針とは、目的を達成するために企業や組織など、グループが共有する行動のルールやガイドラインを指します。組織のビジョンやミッション、戦略や文化など重要な問題に対するアプローチを反映していることが多い傾向です。

行動指針を掲げ社内に浸透させることにより、組織としてどういった行動が推奨されているかを理解しやすくなります。従業員が行動を起こす際や何かに迷った時に、行動指針があることで誤った選択をせず正しい判断ができます。

1-1. 「行動指針」と「企業理念」の違い

企業理念とは、企業が達成したい目的や方向性、企業の価値観を表現したものです。従業員や消費者、投資家、その他の利害関係者にとって、企業がどういう価値観を持ち、どのような方向性を目指しているかを明確にすることが重要です。

一方、行動指針は企業理念の実現に向け、従業員の働き方や行動に言及し、日々どういった行動すべきかを示しています。そのため、行動指針はあくまで企業理念の一部です。

2. 行動指針を決める4つのメリット

行動指針は、従業員が共通の価値観や信念を持ち、目標達成に向けた協力的な組織文化を醸成するために必要です。行動指針を決めることで、目的達成へ向けた行動を起こしやすくなり、組織の成功を促進することができるでしょう。

ここでは、行動指針を決めるメリットを4つ紹介します。

2-1. 企業理念に即した行動を浸透させられる

行動指針を決めることで、従業員が指針に従って行動できるため、企業理念に基づいた行動が浸透し、組織全体で企業理念を共有できます。具体的には、行動指針の策定により、従業員がどのような行動をとるべきかを明確にでき、行動方針を統一させることが可能です。

行動指針には、企業のモラルや倫理観、社内コミュニケーションの方法など、企業文化を反映させることができます。企業理念に即した行動を促し、組織内での意思疎通や協調性を高めることで一体感をつくり上げることができるでしょう。

2-2. 従業員のモチベーションアップにつながる

行動指針を決めることで、従業員のモチベーションや働く意欲の向上が期待できます。どういった行動をすれば評価されるかを明確にできるため、何をするべきかを正しく把握でき、モチベーションやエンゲージメントの向上につながるでしょう。

行動指針に沿った行動を行うことで、社内で表彰されたり、認められたりする機会も増えます。そのような経験を積むことで自信がつき、会社への帰属意識も高まるでしょう。

2-3. 組織の文化が形成される

行動指針を共有すると、組織のメンバーが一体となって働く文化を形成することが可能です。行動指針に従って行動することが組織のメンバーにとって当たり前になれば、それが企業組織の文化として浸透し、従業員の行動目標にも反映されます。

組織の文化は、組織が抱える人々の価値観や行動規範、共有される信念などの全体像を表し、組織の成功や失敗に大きな影響を与えます。そのため行動指針を決めることは、組織の文化形成に重要な役割を果たすと言えるでしょう。

2-4. 顧客対応の質が向上する

行動指針を決めれば、企業は従業員に対し、どういった顧客対応が求められるかを明確に示すことができます。例えば、行動指針に「丁寧な言葉遣いを心がける」という項目がある場合、従業員は顧客に対して失礼のない態度で接することをこころがけるでしょう。

行動指針を設けると、顧客に対する適切な対応が浸透し、顧客満足度向上につなげることが期待できるでしょう。

3-1. 【STEP1】企業理念を定める・確認する

行動指針を作成する際には、まず企業理念を定める・確認することが重要です。企業理念を定めることで、企業がどういった方向性で事業を展開していくかが明確になります。

下記は企業理念のつくり方の一例です。

1.企業のミッション(使命)を定める
企業の存在意義や役割を明確にすることが、企業理念を定める上で重要です。

2.企業が追求するビジョン(理想像)を設定する
ビジョンは、企業が目指す将来像を表現し、具体的でありながらも高い理想を追求するものが望ましいでしょう。

3.企業が重視する価値観を明確にする
企業の価値観は、社会的責任や従業員に対する姿勢、ビジネスにおける原則や基本方針などを示します。

上記の方法を参考に、企業理念を作成してみましょう。

3-2. 【STEP2】望ましい価値観や行動を洗い出す

行動指針を策定する上で、どういう価値観や行動が望ましいかを洗い出すことが必要です。具体的には、従業員にアンケート調査を実施したり、社内外の成功例を参考にさまざまな視点からチームで意見を出し合ったりするとよいでしょう。

行動指針を策定する際には、企業側の価値観やビジョンだけでなく、従業員側の意見を反映させることが大切です。また、成功している企業事例を参考にすれば、実践的なアイデアを取り入れることができます。

3-3. 【STEP3】企業理念にそぐわない行動を除外する

行動指針を策定する際には、企業のイメージを損ねないように、企業理念にそぐわない行動を除外することも重要です。行動指針に従わない場合には、どういった処置を取るかを事前に明文化しておくとよいでしょう。

例えば、軽微な場合には注意喚起を行い、重大な場合には解雇を行うなど、ルールを定めておけば、従業員にとっても公正な対応ができます。

3-4. 【STEP4】リストアップした行動を精査する

リストアップした行動を企業理念と照らし合わせ、本当に企業として実現したいことなのか、本質的に正しいかという軸で内容を精査しましょう。

実現したいことが曖昧な状態では、従業員のモチベーション向上につなげられるような明確な行動指針を策定することはできません。実現したいことや理想は何かを再考し、想いを固めた上で行動指針を策定することが重要です。

3-5. 【STEP5】標語を作成する

行動指針が決まったら、組織全体で共有します。行動指針に沿った行動を従業員にしてもらうためにも、一人ひとりが自然と受け止められるような、分かりやすく簡潔な言葉で伝えることが重要です。正しい内容だとしても、抽象的な言葉や分かりにくい表現である場合、従業員が理解できず行動指針そのものの効果が発揮できなくなってしまいます。
自ずと理解できるよう、1行に収まるできるだけシンプルな標語を作成するとよいでしょう。

4. 行動指針を浸透させる方法

行動指針は作成して終わりではなく、その後社内にしっかりと浸透させて初めて効果を発揮します。従業員一人ひとりに行動指針を浸透させ、本来の意図や目的に沿った活動をしてもらうことが非常に重要です。

ここでは、行動指針を従業員に浸透させる方法を紹介します。

4-1. 業務の中で行動指針を意識できるようにする

行動指針を従業員に浸透させる上で、日々の業務で実践しながら意識してもらうことは重要です。

日々の業務で意識できるように、現状の課題とそれに対するアクションを各従業員に設定してもらい、達成度を確認するための目標管理制度を設けるとよいでしょう。現状の課題とアクションの設定は社内研修など大勢が集まる環境で実施し、振り返りは1on1ミーティングなどが効果的です。

各々の業務の中で必要なアクションを、部署単位で見える化し管理することが効果的です。

4-2. 行動指針に関する項目を人事考課の評価に取り入れる

行動指針を人事考課の評価制度として使用すれば、従業員が企業理念に基づく行動をとることを促せます。評価者もその基準にのっとって、公平かつ客観的に評価を行えるでしょう。

行動指針に沿った行動が評価されるような状況をつくることで、従業員が自発的に行動する可能性が高まります。人事評価基準が明確であれば、従業員エンゲージメントやモチベーションアップにもつながります。行動指針に沿った行動をすることで、大きなメリットを得られると従業員に理解してもらうことが重要です。

4-3. 表彰制度や福利厚生制度を充実させる

規範となるような行動をした従業員に対して、全社で讃えたり、表彰制度を設けたりすることも効果的です。表彰制度により、従業員満足度が上がり、周囲の従業員も表彰を目指そうという気持ちになるため、良い循環が生まれるでしょう。

また、福利厚生制度を充実させれば、行動指針に基づく行動が当たり前となることも期待できます。従業員に、「行動指針に基づく行動をすれば、自分自身の成長や報酬につながる」という意識を持たせることが大切です。

5. 行動指針の実例3つ

ここでは、有名企業が掲げる行動指針の実例を3社紹介します。

Google

Googleが掲げる10の事実
1. ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる。
2. 1 つのことをとことん極めてうまくやるのが一番。
3. 遅いより速いほうがいい。
4. ウェブ上の民主主義は機能する。
5. 情報を探したくなるのはパソコンの前にいるときだけではない。
6. 悪事を働かなくてもお金は稼げる。
7. 世の中にはまだまだ情報があふれている。
8. 情報のニーズはすべての国境を越える。
9. スーツがなくても真剣に仕事はできる。
10. 「すばらしい」では足りない。

引用:Google「Googleが掲げる10の事実」

検索エンジンなどのオンラインサービスを提供・運営しているGoogleの行動指針です。Googleは会社を設立し数年後に「Googleが掲げる10の事実」という経営理念にも通じる行動指針を作成しています。Googleの価値観が「10の事実」から理解できます。

ANAグループ

グループ行動指針
私たちは「あんしん、あったか、あかるく元気!」に、次のように行動します。

安全(Safety)
安全こそ経営の基盤、守り続けます。

お客様視点(Customer Orientation)
常にお客様の視点に立って、最高の価値を生み出します。

社会への責任(Social Responsibility)
誠実かつ公正に、より良い社会に貢献します。

チームスピリット(Team Spirit)
多様性を活かし、真摯に議論し一致して行動します。

努力と挑戦(Endeavor)
グローバルな視野を持って、ひたむきに努力し枠を超えて挑戦します。

引用:ANAグループ「経営理念・ビジョン・行動指針」

日本最大手航空会社のANAグループの行動指針です。シンプルな単語に説明文が加えられており、内容が理解しやすいことが特徴的です。航空会社には欠かせない安心安全を礎に、少しずつ視野を広げ、グローバルな企業活動をし続けるというストーリーが読み取れます。

サッポロビール株式会社

行動規範

カイタクしよう

カイタクしよう、心を動かすアイデアを

カイタクしよう、お酒の次の未来を

カイタクしよう、深く愛されるブランドを

カイタクしよう、社会との共鳴を

引用:サッポロビール株式会社「行動規範」

日本の大手ビールメーカー、サッポロビール株式会社の行動規範です。「開拓」というワードをあえてカタカナ表記にすることで目を引き、倒置法で強調する形のオリジナリティ溢れる標語となっています。

まとめ

企業において目標を達成するための行動のルールを示す行動指針は、策定により企業理念に基づいた行動を推進するだけでなく、従業員のモチベーションアップにもつながります。また組織の文化形成や顧客対応の質アップも期待できます。

行動指針を決める際は、まず企業理念をしっかりと固めた上で、自社にふさわしい行動を吟味し、従業員が受け取りやすい言葉で標語をつくりましょう。行動指針をつくるだけでなく、社内に浸透させることも大切です。

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